キンダーガーテン 二   ~優しい居場所に~
車にあったシートを敷いて、お弁当を用意したら

……………………。

「唯ちゃん……手。」って…

………手??……?……お手?

……………犬??……

大きなハテナマークを浮かべて

先生の手の上に……お手をしたら……

「逆!」って…笑われた。

…………逆??………

不思議に思いながら、反対の手を出そうとしたら

「逆って言うのは、左右じゃなくて…こう言うこと!」って

笑いながら手をひっくり返された。

手のひらを上に向けて……先生の手にのせられた。

「あぁ~。
唯ちゃんと一緒だと、いいムードなんて無理だね。
公園でピクニックだし、お手をされるし………。」って

ブツブツ文句を言う割には……ご機嫌な笑顔のまま。

ポン!って…

手のひらに冷たい物がのせられた。

…………鍵??……

イチゴのキーホルダーの付いた鍵を

唯の手に握らせて。

「これは、唯ちゃんの。
落としたら入れなくなるから…大切にしてね。」って

訳が分からず……先生の顔をじっと見たら

「いつでもおいで。」

もしかして……先生のお家の鍵?

「ほら、照れるからあんまり見ないの。
さっき荷物を置きに行く時に作ってもらった。
まさか、その間に保護者が現れるとは思わなかったけどね。」

照れて早口になった先生。

もう一度手のひらを開けて、イチゴの鍵を確認した。

「…………これ………唯の??………」

「そう!唯ちゃんの。
食器も買ったし、淋しくなったらいつでもおいで。
一緒にご飯食べよう。」

さっき……

ずっと黙ってた時間………色々考えてくれたんだ。

ホント……唯は……幸せものです………

先生と出逢えて………良かった。

デザートのプリンは

ちょっとだけ塩味がしたけれど………

今までで、一番美味しかった。

「喜んでくれた?」

覗き込む先生にうなずくと

「ご褒美ちょうだい」って…

笑いながら"あ~ん"って、口を開けた。

少し戸惑いながら先生の口に入れて

その後………"えい!"って心の中で気合いを入れて

唯の口にも一口入れたの。

少し驚いて

それから………ニッコリ笑って……

「美味しいね」って…

うん。先生、美味しいね!

鍵をもらった記念日は…

人生初……はんぶんこした記念日にもなったの。

カバンの底にある、先生からもらった鍵。

それがあるだけで…

温かい幸せが、カバンいっぱいに詰まって思える。

お家を開ける、ただの鍵。

でもね。

この鍵は多分……唯のこれからを開けてくれる

大切な鍵になるような気がする。

きっと絶対……幸せが訪れる。

そう思える鍵なの。

< 74 / 153 >

この作品をシェア

pagetop