キンダーガーテン 二   ~優しい居場所に~
「この一年半……。
唯さんから…ご家庭の悩みを、何度か相談されました。
……正直言いますと……涙も沢山見てきました。
始めは…私に、恋愛感情などなかったようですが…
かなり、キツい状態だったようで
10才も離れた私には、相談しやすかったようです。
お付き合いして半年。
彼女本来の笑顔を、見せてくれるようになりましたが…
心の隅には、いつもご両親の事があるようで……
私一人の力では、この不安を取り除いてあげることは
無理だと思い……
今日はお邪魔させて頂きました。」

えっ?

………そんな理由??

唯の為??

「唯さんは…
ご両親もご存じだと思いますが…
かなりの怖がりで、淋しがり屋です。
それに、決して……強いとは言えません。
おまけに………とっても泣き虫です。
本来、一人でいることが苦手で
……夜は特にそうみたいで……
『怖い』『淋しい』と泣くことも……よくあります。
それでも………皆さんが帰った時『おかえり』と言ってあげたいと
淋しさに耐えて、このお家に一人で待ってます。
近くで見ていると………本当に痛々しくて………。
時には強引に、家に連れていこうかな?と考える日も
ありますが……それも、困らせるだけなので…。
今は、眠りに就くまで……電話に付き合う事が
………私に出来ることです。
幼稚園の仕事は、とても肉体労働で…
おまけに命を預かっていますから…
精神的にもかなりハードになり、大変な職業です。
ようやく2年目を迎えた唯さんには、
まだまだ覚えることも多く
慣れない仕事にかなりの疲れがあると思います。
家に帰って家事をこなし、眠れない日々を過ごしていれば…
いずれ体調を、崩してしまいます。
私で出来るサポートは、させてもらってますが…
仕事の事となると…出来ることは極僅かしかないので…。
せめて一人で過ごさなくてすむように
先日プロポーズをさせて頂いたのですが…
今はまだ…家から離れられないと言われました。
唯さんが、安心して巣立つことが出来るようになるまで……
待つつもりです。
ただ………
このまま時を重ねても…変わらないように思い
生意気は承知でお話しさせて頂きました。
唯さんの不安を取り除けるのは…お二人しかいません。
どうか、よろしくお願いします。」

そう言うと、深々と頭を下げた先生は

…………そのままの姿勢で。
< 80 / 153 >

この作品をシェア

pagetop