キンダーガーテン 二   ~優しい居場所に~
「そんな訳で。四人に話したら
『唯ちゃんの部屋に鍵を付けろ!』『確認しに行く。』って
気づいたら遊びに来ることになってて……
まぁ~この部屋を模様替えするのにも
色々助言貰ったから…見せないとね。
ここはオレの家だけど…これからは唯ちゃんの家でもあるんだから
遠慮せずに友達を呼んで良いからね。
特にこの部屋は、唯ちゃんの部屋だから
勝手に入らないし、好きなように使ったらいいよ。」

「先生…。」

「よし!
今日は疲れたし…寝ようかなぁ~
唯ちゃん、シャワー浴びておいで。」

部屋を出る先生について行ってシャワーを浴びた。

お風呂上がりのスッピンの顔を見られるのは恥ずかしいけど

『おやすみなさい』を言わないとね!

あっ!…電話の挨拶じゃないんだぁ~

顔を見ての『おやすみ』って初めてだ…

ドキドキする。

お風呂上がり以外の顔のほてりを感じながら

リビングに…少しだけ顔を覗かせた。

「おやすみなさい」って声をかけると

「おいで」って…

う~ん。そうくるかぁ~

恥ずかしいのになぁ。

でも……

いっぱい幸せを与えてくれる先生に…こんな挨拶はないよね。

ソファーに座る先生に近づくと

「髪…濡れてるよ」って…

先生も浴びるかな?と思って、部屋のドライヤーで

乾かそうと思ったのに…

「大丈夫。」って答える唯の手を引いて、ソファーに座らせると

「ダメ!」って笑いながら洗面台に行ってドライヤーを持ってきて

コンセントを繋ぐと後ろに回って、唯の髪を乾かし始めた。

ええっ~…いいようぅ~

そんなことされたら、恥ずかし過ぎて倒れちゃうよ。

唯の辞退の言葉は、軽くスルーして

「いいから、いいから!
お客様、熱くないですかぁ~」って…美容師さんごっこを始めたの。

ただ、この美容師さん。

「う~ん。いい匂い。
同じシャンプーなんて…照れる~」って…

余分なおしゃべりばかりで…あまり手が動いてないんだけどね。

楽しそうな先生の、ご機嫌な声を聞くと…

これって……現実だよね??

先生と笑って…一緒に過ごしてるんだよね?って

不思議に思う。

ねぇ~先生…

ホンの2週間くらい前まで…

今までで…一番不安な夜を過ごしてたんだよ。

尋ちゃん、お父さん……お母さん。

皆……バラバラになって

もう……無理かなぁ~って…

いっぱい泣いて……いっぱい悩んで……

その後、職員旅行になって

一人になる不安を抱えたまま行った旅行は…

先生まで離れたら?って不安が…周りを巻き込んで…

咲ちゃんや航君にまで…嫌な思いをさせちゃって…。

本当に辛く悲しい時間だったのに…

先生に淋しかった気持ちを伝えたら

鍵を貰って…

お父さん、お母さんに話しをしてくれて…

明日は…家族皆で…また会えて。

唯が…

何年も心から望んでいた時間を……与えてくれたんだよ。

…………ありがとう。

ホントは…もっといっぱい…お礼が言いたいのに…

色んなことが有りすぎて……

ちょっと……疲れたみた…………い。

先生の乾かしてくれる手が…

ヨシヨシって…撫でてくれてるみたいで………

なんだか……眠くなっちゃった………。

今日は久しぶりに、心から安心して…

ゆっくり眠れそう………。

う~ん。………きもち………いい………。
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