不倫
「江藤君。」
「はい。」
席を立つと同時に、
社会部 野口部長に呼ばれた。
「聞いたぞ。例の刺殺事件を取材してるんだってな。」
「えぇまぁ。取材というか、警察関係者にちょっと頼まれまして。」
「ついでだ。
被害者遺族にも話聞いてきて。」
「え・・。部長、私はどちらかというと加害者のほうの取材を・・。」
「だから“ついで”と言ってるだろ。
せっかくだから記事にしないと。
犯人が捕まったんだし、被害者遺族のコメントの一つでも取ってこい。」
部長は住所と電話番号が書かれたメモ用紙を渡してきた。
「被害者の両親。
それから被害者の奥さんの住所だ。
アポは俺から取ってあるから両方から話聞いてきて。」
「・・・は、はぁ・・。」
・・・・真田すまん。
こうなってしまっては仕事を優先させてもらうぞ。
メモ用紙を持って、デスクルームを出た。