不倫
「この度はとんだことで。
お悔やみ申し上げます。」
「・・どうも。」
厳格の中にも、
少し憔悴が混じっているか・・。
息子を失ってしまったんだからそれも仕方ない。
「家内は事件以降体調を崩しているので、私だけの対応で勘弁して下さいませんか。」
「もちろん大丈夫です。お時間取って頂き誠にありがとうございます。」
リビングの机に座らせてもらうと、
手帳とボールペンを鞄から取り出す。
「早速ですが・・息子様はどんなお子様でしたか?」
「・・・普通の子です。」
「・・普通?」
「挨拶が出来て、
ある程度勉強が出来て、
人並みに運動が出来て。
当たり前のことが当たり前に出来る息子です。」
「・・・そういう意味で言うと、当たり前に出来ない人が今の世の中多いですからね。
特に若い子なんかは。」
「息子は厳しく躾けてきました。
あの子は反抗期も無く、
私や家内の教えを忠実に守って、
立派な大人になりました。
ダイスケが怒った所は見たことありません。」
「息子様の高校時代の同級生に取材した時、
その方が息子様の事を“人格者”と羨望の眼差しを向けて言っていました。
ご両親の教育の賜物なんですね。」