不倫


「息子を殺した谷口、
確か高校時代のクラスメイトでしたね?」


「はい。お父様は谷口をご存知でしたか?」


「・・息子は友だち付き合いも普通に出来ているという事は把握してましたが、個人名は特に覚えていません。」


「そうですか・・・。」




「・・・・・・殺してやりたいです。」


「・・・。」


「ダイスケは決して人に憎まれるような子ではない。人を憎む子でもない。

犯行動機を黙秘しているとニュースで見ましたが、

“理由が無い”から黙秘しているんじゃないですか。」


父親は緑茶が入っている湯飲み茶碗を持った手を震わせる。


「この国の司法に代わって、私があの男をこの手で殺したい気持ちです。」


口調は静かだったが、
その言葉一つ一つに怒りを感じる。

そして哀しみも・・。

< 94 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop