人色-hitoiro-
華純「え?」
奏「嫌な女だね、あんた。」
泣きそうだった‥‥。
木崎さんの言葉に傷付いたのか
その通りすぎて悔しかったのか
阿久津くんが優しいからなのか
分からないけど泣きそうだった。
奏「だったら九条くんと
別れればいいんじゃない?
その覚悟もないくせに
伊織ちゃんを悪く言うな。
そういう偽善、鬱陶しいから。
伊織ちゃん。行こう。」
阿久津くんが握ってくれた
手があまりにも温かくて
堪えた涙が溢れ出した。
阿久津くんは涙を拭うでもなく
慰めの言葉をかけるでもなく
優しく優しく手を引いて
歩いてくれる。