人色-hitoiro-
涼介「阿久津くんの気持ちは分かるよ。
でも、いおも人間だから。
どれだけ感情に鈍くても
いや、鈍いからこそ戸惑うんだ。
得体の知れない‥自分じゃない自分。
知らない自分に出会った時に
一番脆いのはいおなのかもしれない。」
奏「腹立たしくて悲しかった。
染まらない伊織ちゃんが
何よりも大切だと言っていた
九条くんの言葉の意味を理解した。
傷付いている事に気付かないから
そばで守ってあげたくなる。
でも、何色かに染められていく
伊織ちゃんの姿を見ると
こっちが壊れそうになる。
有名な絵画みたいに手の届かない
場所にいる伊織ちゃんを
眺めているだけで十分だった。
本当は今日、俺は傍観者でいたかった。」
涼介「でも、阿久津くんは
京夜とは違う。阿久津くんは
絶対にいおから逃げないよ。
何があっても逃げない。
少なくとも俺の目にはそう映ってる。」
悪いのが誰だとか
そんな風には思わないけど
俺は、ただいおに目の前のこの人と
幸せになってほしかった。