人色-hitoiro-
京夜「何で来るんだよ‥伊織‥‥。」
伊織「ふざけんな!」
水なのか涙なのかは分からない。
俺の背中に冷たい何かが伝わる。
俺は深くため息をついた。
だから、嫌なんだ。伊織は。
伊織の手をそっと離し
その手を握ると海を出る。
砂浜に座った伊織は泣いていた。
伊織の涙を見るのは初めてだった。
これから先も絶対に
見たくないと思っていたのに
伊織は涙さえもどうしようもなく
美しかった。