人色-hitoiro-
奏「俺は、あの人に言ったんだ。
俺たちが出会った頃、あの人は
結婚してて、でも浮気ばっかりする
どうしようもない男でさ。
何かある度に。寂しくなる度に
いつもあの人は俺の事を呼び出した。
数え切れないほどの愚痴を聞いてさ
耐えきれなくなった俺は何度も別れを
進めたけどあの人は離婚しなかった。
だから、別れる事が出来ないのなら
俺があなたの逃げ道になるって言った。」
一度しか会った事のない
阿久津くんの最愛の人の話を。
奏「高校生のガキが何言ってるんだよって
きっとあの人は思ったと思うよ。
でもそれが、あの時の俺の全てだった。
しばらくして、俺はあの人と
ようやく付き合う事が出来たけど· · ·
離婚協議中だの何だのって
理由をつけてはなかなか離婚しなくて
別れたと思ったらすぐに
うちの親父と結婚してた。」