白き竜の語り部

 ──まだ半日も進んでいないというのに、我らの前に邪魔者が立ちはだかった。

「シレア!」

 下卑た目をシレアに向けた五人ほどの男たちに、彼は微々たるも表情を変えることなく腰の剣を抜いた。

 なんとも勇ましくはあるが相手は五人。こやつらもそれなりの修羅場もくぐり抜けていよう。

「卑しい賊めが!」

 我も携えていた剣を抜き、シレアの背に背を重ねて構える。

「こいつは高く売れるぞ」

「顔に傷は付けるな」

 なんと浅ましい事か! こやつらは奴隷商人だ。

「未だおるとは、嘆かわしい」

 奴隷は数十年も前に聖王が廃止し禁止した行為であるというに、細々とではあるが続いている事に驚きは隠せぬ。

 奴隷により発展した時代は確かにあったであろう。しかし今や、それは厳しく罰せられておる。
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