白き竜の語り部
「そっちの奴はちょっと歳食ってるな」

「なあに、年増の金持ちに売れるさ」

「聞こえておるぞ」

「すまない」

 まったく。よくも笑いおったな。

 賊の言葉は腹立たしい事ではあるが、このまま元の姿に戻りて焼き殺すのも面白くなし。罪の重さを剣の痛みで重々に理解してもらおうではないか。

 こやつらの剣は重く、大した手入れはしておらぬ。当たれば激しい痛みと、その傷は跡となることだろう。

 しかれど、これは好機。シレアの剣技をこうも早く間近に出来ようとは、我も運が良い。

 そんな事を考えている間に、男どもがシレアに剣を振り上げた。なんと愚かな。エルドシータに向かって策も無く突進するなど、無謀にも程がある。

 その通りに、シレアは最も近い男の懐に入ると素早く刃を走らせた。それだけで、男は声をあげる暇なく土人形のごとく転がる。
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