白き竜の語り部
 それを見た男たちは、それをまぐれだと思い違いをするであろう。シレアの動きには、まったく隙も無駄もないというのに、あまりにも愚劣だ。

 とはいえ、ここは冷静なシレアだ。己に奢らず、一歩退く事を忘れない。そうだろう、これだけの数に判断を誤ればとんでもない事になる。

 我の興味も失せ、どうなろうと知った事ではない。

 退いたシレアは逆手に剣を構え、我が予想していた通りに口の中で詠唱を始めた。それにはまるで気付かず、どうにも反撃を食らった事が許せないのか、我には誰も攻撃をしてこぬ。

 なんとも呆れるばかりであるけれども、ゆうるりとシレアの動きが見られるのだから感謝せねばなるまい。

 複数の攻撃をかわしながらも詠唱は止まっておらぬ。

 この時間で考えられる魔法といえば──
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