白き竜の語り部
*不可思議なもの
──太陽が真上をやや過ぎた頃、我は剣の手入れをするシレアの様子を眺めておった。
細長い研石(といし)に水を落とし、湿らせたのちに刃を滑らせる。
二枚の異なる荒さのものを貼り合わせた研石はエルドシータが愛用している品だろう。
持ち運び用にやや小さめであることも注目したい。
先ほどの戦いにおける切れ味といい。
使い込まれた研石と手慣れた研ぎ様に、武器や刃物を大事にしていることがよく解る。
とりわけ、目を惹くのが今まさに研がれている剣だ。
「その剣を見せてもらえまいか」
手入れされた剣は、なんとも見事な輝きを放ち人に化けた我の姿を映しておる。
戦士が持つには短めではあるけれども、シレアには丁度良い長さなのだろう。
「不利と感じたことは」
「ない」