白き竜の語り部
 見事なレリーフには惚れ惚れするけれども、ドワーフの技術には遠く及ばぬ。

 背は低く酒好きで女にも髭が生えておる豪快な性格なれど、その手さばきは繊細でエルフとはまた違った美しい物を作り上げる。

 この二つの種族が造ったものには、作成の過程で念を込めれば込めるほどに自然と魔力が宿る。

 我はどの種族の装飾品も好みである。

 肉を切り分けたシレアはカルクカンを呼び寄せ、清潔な布で肉をくるみソーズワースの背に乗せる。

 草原に出てシレアは早速、集めた小枝をまとめて火を灯す。それから岩をまな板代わりに食事の準備を始めた。

「鹿鍋か」

「まだ食うのか」

「そなたの料理は別腹である」

「ドラゴンからそんな言葉が聞かれるとはな」
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