白き竜の語り部
──我はひと月ほどをシレアと過ごし、また空に戻ろうと別れのときを告げた。
[さて。楽しき旅であった]
「いい経験をした」
[嬉しき言葉。また、どこかで会おうぞ]
「そうだな」
簡素なまでの返しであるが、それでよい。
これは真の別れではなく、再び酒を酌み交わす日のための安息でもあるのだ。
久方ぶりに大きく翼を羽ばたかせ、小さくなるシレアの姿を見つめる。
「人間とは何か」
理解するのはまだまだ先のようである。
我が、それを求めているのかは解らぬが、彼らもこの世の一部である事は間違いはない。