近づいてよ

どうやら本気らしくて
笹沢さんはなおも続けた

「前から…田仲のこと可愛いなって思ってて」

「ぇえ？」

「それに、笑顔もいいし、しっかり仕事も気配りできるし」

笹沢さんの顔が近づいてくる

「……俺じゃダメかな？」

「あ……の……」

笹沢さんは直属の上司
仕事も出来るし、光とはタイプの違う美男子

身長は180センチ位でたぶん光と同じかなって並ぶと思う
スポーツをやってきたのか肩幅があって、背中も広い

華奢な光に比べると男性！って感じがする…

顔は整っていて綺麗なアーモンド型の目に通った鼻筋
ぷっくりとした唇がなんとも愛嬌があって
秘かに社内でも人気が高い


笹沢さんは困惑する私に

「可愛いな田仲……まぁ……考えてよ
……俺、本気だからさ」

そう微笑むと頭にポンっと手を添えた

「何が何やら……」

笹沢さんが会議室を出ていった会議室で呆然としてしまう


その日から数日……
私は笹沢さんの事ばかりを考えた

いや、そうしようと心掛けたのかもしれない


光はもうすぐ彩香ちゃんと結婚して離れていく
私のものにならない光を諦められずにずっと一人で想いを抱えていくの？


それを涙を飲みながら見送るより
誰かに愛してもらえたら……

ラクニ……ナレルンジャナイ？


浅はかな考えだと思った

笹沢さんに失礼だとも思った


だけど……光が私以外の誰かと結婚していくのを笑顔で見送る事なんて……
どうしても出来ないと分かっていたから手を取った

(諦められないならせめて他の人に目を向けよう)


それに…笹沢さんは優しくて仕事も出来るし尊敬できる上司だと言うことに間違いはなくて

(好きになれるかもしれない)

そんな風に思ったから付き合うことを決めた