近づいてよ
両親の前で修太郎さんは丁寧に挨拶をした

「笹沢修太郎と申します……美空さんと同じ会社、部署で企画課の課長をしておりまして、少し前から美空さんとお付き合いをさせて頂いております」

「そうでしたか…はじめまして、美空の父です……笹沢さんはお若いのに課長さんですか…優秀なんですねぇ」

父は出された名刺を見てから私をちらりとみた

「どうですか美空は……会社で迷惑をかけていませんか?」

「とんでもない!美空さんはとても気配りが出来て仕事も熱心で優秀と評判の社員です」


「そうでしたか……それは良かった」

上品な振舞い、話し口の修太郎さんはあっという間に厳しい父とも打ち解け始めた

(さすがだわ…)

父の隣に居た光は何も言わずに私と修太郎さんを見ている

何を考えているんだろう……


そして……軽く食事が済んだ頃、修太郎さんは結婚の話を持ち出した

「いずれは美空さんと結婚をしたいと思っております
お付き合いをお許し頂けますでしょうか?」

「美空はどうなんだ?」

修太郎さんの言葉に父が口を開き、その隣の光は睨むように私をじっと見ているからそちらを見ないようにした

「……私は、そうなったらいいなって……」

さらに強い視線を送る光の姿にいたたまれなくなって
下を向いた

「まぁそれなら反対する理由もないよ…私はね、ただ……」

父は口ごもり、光にチラッと視線を走らせた

「ひー」

小さい時から、父は光をひーと呼ぶ。

「はい、おじさんナニ?」

「お前はどう思う?」

なぜかそわそわした感じで父が光に話をふった
なぜここで光に話を振るのだろう

すると…光はグレイの瞳を細めて形の良い唇を三日月のように引き上げて妖艶に笑った

「あー、美空が保つなら……いいんじゃない?何ヵ月も続かないでしょ?この人相手じゃ
よくわかった………じゃ、オレ家帰る!おじさん、佐和子さんまたね?笹沢さんお邪魔しました」


私の頭をポンポンと叩くと光は家を出ていく

「なっ」

クスクスと笑う父母に苦笑いの修太郎さん






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