近づいてよ
夕陽が射してくるこの時間は部屋の中がオレンジだ

その綺麗なオレンジに顔の半分を照らされた私

ガラにもなく、乙女チックに…ぼんやりと物思いに耽ってい…………た、はずだった

それなのに……

「あのさぁ、ちょっとは大人になれば?」

「…………」

「聞いてる?美空(みく)?お前は、絶対向いてないって……自分でも分かってんでしょ?」

小憎らしい位整った顔をした男

加崎 光(かざき ひかり)が部屋にきて

失礼な言葉を言い放つから現実に戻ってしまう

「そ、そんなの分かんないじゃない!やってみたら向いてるかもしれないでしょ?」

「いいや分かる……何年俺がお前の隣にいるか知ってる?」

「24年……」

綺麗なとろりと蜜をかけたようなグレーの瞳で
光は私を覗きこむから怯んでしまいそうになる

(怯まない、怯まない!)

「わ、わ、私だって成長してるもん!やってみせるもん!」

光はフンッと鼻を鳴らすように嘲笑うと私の頭に右手をポンっと置いた

「……もん…って、それじゃあアイツは満足できないんじゃない?お子ちゃま過ぎてさぁだから諦めろよ」
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