近づいてよ
そんなこんなで昨日はムカついたままだったのに

今日もフラりと光がやってきて目の前でスパゲッティなんて呑気に食べてる

彩香ちゃんとの結婚がどうなるのか気になりながらも
私も黙々と食べ続けていると

きのこパスタをクルクルと目の前で綺麗にフォークに巻き取っている光がこちらも見ないで聞いてきた

「で?……笹沢だっけ?アイツとの仲はどこまで行ってんだよ」


「どこまでって……そりゃあ…婚約者なんだから、ねぇ…」

………実はキス止まりなんだけども……

そんな事は光に言いたくない

すると光はフンッと鼻を鳴らした

「どーせ、清い交際してんだろ?おこちゃま美空にあわせて……笹沢、そこは評価できるな、うん…」

「は?なんで」

なんでそんな事断言できるのよ!

「だからさぁ……何年一緒にいると思ってんだよ?お前に変化ないのはバレバレ、よって清い交際決定だろ」


光はなんてことないかのように言ってのけた

「だ、大事にしたいんだって修太郎さん……優しいから」

「優しいねぇ……ふうん…」

お皿が空になったのでシンクに下げに行った光がスポンジでお皿をキュッと洗いながら急に話しかけてきた

「美空」

「うが?」

急に名前を呼ばれたものだから、変な声が出た

「うがって……なんだそれ……」

光は呆れたように笑う

「煩いなぁ……なに?突然呼ぶからでしょ?」

ケホケホと噎せながら答えると光は真顔になった

「あのさ………オレ、家出るわ」

「え…?」

何を言ったの?

「だからぁ……家、出るんだよ」

いつの間にか洗い終わったお皿を持ち拭きながら光は私を見た

(ついに結婚に向けての同棲なのかな)

動揺して何も言えなくなる

「……」

「何?寂しいか?」

いつだって光は意地悪だ
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