近づいてよ
(ん?ちょっと待って?)

甘い声に酔いしれて本心を晒しそうになったけれど……
ガバッと力を込めて光を押しやると掠れる声で叫んだ

「何?好きって意味が分からないけど!!」

「うわっ、怪力っなんだよ………」

「ごめん、でも………光!けっ、こんするのはどうなるの?!」

(彩香ちゃんはどうなるの?)

すると…突き飛ばされて尻餅をついた光は訝しげにこちらを見あげて不貞腐れたように呟いた  

「はあ?結婚?結婚するって言ったのお前じゃんか
オレが誰と結婚すんだよ……イテーな」

頭の中がパニックだった

(だって、だって……彩香ちゃんが……)

「え?彩香ちゃんは?」

私の言葉に光は可笑しそうに口を袖で隠して一頻りはははと笑うと

ニヤリと口を引き上げて離した身体を私にまたくっつけた

先程よりも強くぎゅっと抱きつかれて息が苦しい

(一体何?)

「あのさぁ」

光は放心状態の私を抱きしめたままチェアの上にストンと座らせて
クスクスと笑いながら私の鼻を摘まんできた

「いたっ……何すんの…バカ光!」


「彩香って、なんて名前だか知ってる?」

「え?……彩香ちゃんは彩香ちゃんでしょ?」

光はそこで衝撃的な言葉を落とした

「香取 彩次 が本名……あいつ、男だからね?」

「はぁぁ???」
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