楔~くさび~
マオはいろんなことを教えてくれた。
私は井の中の蛙。
広い世界を知っているようで全然知らない。電車の乗り方もバスの乗り方も、切符の買い方さえわからない。
マオは休日の日に、一緒に電車に乗ってくれた。切符の買い方も教えてくれた。
マオと一緒にいることで、私の世界が大きく広がっていった。
世界は果てしないんだ。そう思えた。
初めてキスしたのは、付き合い始めてから1ヵ月後の記念日の日。
その先は・・・。
私の過去を何も聞こうとしないマオ。
私は「知りたくないの?」って聞いた。
マオは言った。
「知らなくていいことのほうがあるかもしれないよ。それにオレは今のピカを知ってればそれでいいよ。今のピカはマオ色に染まってる?」
そう言って私を抱きしめた。
私の「初めて」はマオに捧げた。
その頃、私は一人暮らしを始めた。
マオと付き合うきっかけはある冬の日のこと。