楔~くさび~


雑誌の撮影で、あるスタジオに行ったとき、バッタリ、ケンイチに会った。


お互い、知らなかったから、すっごくビックリして。


でも、何も言葉が出てこなくて。

私は知ってた。ケンイチに新しい彼女ができたこと。週刊誌にスクープされてたから。


心のどこかで落胆してる私がいた。


その後、私はマオに電話した。


でも、何も言えなくて、ずっと電話口で泣いていた。


それをずっと黙って聞いていたマオが突然言った。

「今どこ?出てこられる?オレ、今日休みなんだ」


マオに言われた場所に行った。


それは海が見えて、観覧車がある大きな公園。


ニット帽で頭をすっぽり隠して、手袋もして、マオを探しながら、一人ベンチに座った。


キレイ。こんな場所で撮影したことなかった。


周りを見てみる。


・・・うわ~カップルばっか。


しばらく上を見て空に浮かぶ真っ白い雲を見ていた。


カメラで撮った。


・・・・ん?


その景色に急にマオの顔。


「・・・!?あっ、マオ」


「よっ。」


黒いコートに手を突っ込んだマオが隣に座る。


何も会話がない。


気まずいな~なんて思ってた瞬間、マオが急に立ち上がった。


「マオ?」


「ちょっと待ってて」


そう言って、マオがどこかに走り出していった。


・・・えっ?私、一人置いてっすか?どこ行ったんすか?


まいったなぁ~と思いつつ、またベンチに座りなおして、景色をぼんやり見てた。
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