楔~くさび~
「うん、うん。・・・わかってるよ。ちゃんと行くから。わかったって」
眠い。マオの声が聞こえる。
電話?誰かと話してる?
・・・あ、そっか。昨日、あのまま、マオの家に泊まったんだ。
寝返りを打つ。マオが気づいたみたい。
「じゃ、また後で」
電話を切った。
「誰?」
「ん?あ~、知り合い」
「女~?」
「バ~カ、違うって」
大学生になった私は、PTAの規制が厳しかった女子高を卒業し、円満な大学生活を満喫していた。
ピッチも持って、必要なときにマオと連絡を取れるようになっていた。
あの頃だね。
マオ。
あの頃に戻りたいよ。