楔~くさび~


2回目の誕生日は新宿のイルミネーションを手をつないで見に行った。


そして、明日は・・・・。


実はノープラン。マオからは何の連絡もない。


私よりも忙しいのかな。何だか寂しい。


仕事が終わり、帰宅。お風呂からあがって、髪の毛を乾かしてたら、マオから電話。


ダッシュで電話を取る。


「ピカ?」


「うん!」


「何?まるで電話を待ち構えてた感じだね」


「うん。忠犬ハチ公!」


「あははっ」


「今度、同じ現場で仕事だね」


「そうだな。かなり久しぶりだよな」



たわいもないことを1時間くらい話した。最後にマオが言った。


「曲作りしてるの?」


「うん、ちょこちょこね。でもまだ世の中に出せる段階じゃないや。大学ではずっとクラシックばっかりだしね」


「そっか~。ピカ、こんな曲の世界観が理想だなっていう曲とかあるの?」


「こんな曲が世界観?」


少し考えた。


「あっ、あるよ!!すっごい昔の曲なんだけど」


「何て曲?」


「小坂明子のあなた」


「あなた?」


「そう。歌詞が素敵なんだ。真っ赤な薔薇に白いパンジー、子犬の横にはあなたがいてほしいって歌詞。二番はね、家の外には坊やがいて、坊やのそばにはあなたがいてほしいって歌詞なの。多分、私が産まれたくらいの頃の歌じゃないかな。懐メロになっちゃってるかも」


「へ~。ピカなら書けるんじゃないの?そういう世界観の歌詞」


「書けるかな~。あ、明日なんだけどさ・・・・」


「うん、何?」


「何時に行けるかわかんないけど、朝までには行くから。眠かったら寝てなよ」


マオが来てくれることがわかって、私は一気にハイテンション。


「わかった!!!」






マオ。



あの日が忘れられない一日になったんだよ。



マオは覚えていますか?
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