楔~くさび~
翌日。
パパラッチを避けるため時間差で仕事先へ。
仕事とプライベートは完全に分けるというのが私のモットーだけど、現場に彼氏がいたら、テンションあがりまくり。
いつの間にかマオを目で追ってしまう。
けど、マオは忙しそう。
・・・・あ、女性スタッフと話してる。・・・・あ、二人で笑ってる。何話してるんだろう。
休憩時間。
少しショボ~ンとしながら食堂へ。
「ヒカリ~!!」
チサが話しかけてきた。
「チサ?えっ、チサも今日はこの局で仕事なの?」
「うん。歌番組の収録なんだ。」
「ふ~ん」
「ヒカリはいつになったら歌を出すの?」
「え・・・・?」
それはなるべく避けて欲しい話題だった。
実はスランプに陥っていた。
曲ができても歌詞が書けなかったり、歌詞が書けても曲が書けなかったり。
悩んでた。
でも、マオには心配かけると思って言わなかった。
「何でマオたん、お母さんのことをヒカリに言わないんだろうね?結構入院長引くみたいだよ」
「そうなの?」
「うん」
「何か後ろめたいことがなかったらいいけどね」
と言ってチサが席を立った。
「またね、ヒカリ!」
何でそういう含みがある言い方すんだよ・・・。