楔~くさび~
裏切り
コブクロの「赤い糸」を聞いていた。
寂しかった。
そんなときに電話が鳴った。
「もしもし?」
「あっ、ヒカリさん?」
あたしの付き人兼スタイリストの男の子から。
「何?」
「ボク、見ちゃったんですよ。話していいのかわからないけど・・・」
「何を?」
「ヒカリさんの衣装を調達しに表参道に行ってて、そしたらヒカリさんの彼氏が」
「え?マオ?マオがどうしたの?」
「チサさんと一緒にいました」
・・・・えっ?何それ。チサと一緒?どういうことよ?
「それ本当なの?」
「本当ですよ。腕を組んでて」
頭の中で何かがプツンと音を立てて切れた。
「もういい」
「あ、ヒカリさん・・・」
即電話を切った。
チサの何か言いたそうだった顔はこのことだったんだ。
じゃあ、お母さんが病気っていうのも嘘?全部嘘なの?
一晩中泣いた。
電話には一切出なかった。
インターホンが鳴っても出なかった。
翌日は仕事が休みの日だったから、ちょうどよかった。
泣き続けて腫れてしまった目に冷却パックをつけて、1日中ぼんやりと過ごした。
うそつき。マオのうそつき。