楔~くさび~


次のクールもドラマに出ることになり、私は大学と仕事の両立でとても忙しかった。


でも逆にそれがよかったのかもしれない。


その間はマオを忘れられたから。


そんなある日。


仕事が終わって深夜2時。


疲れきってエレベーターで部屋までのぼる。


バッグから鍵を出して、・・・目をあげるとその瞬間、私の部屋の前でたってるマオを見つけた。


「マオ・・・」


「ピカ。何で?どうして電話に出てくれないの?家に来ても出てくれないし。何があったんだよ」


「は?それはこっちのセリフだし」


鍵を開けて部屋に入ろうとする。マオが部屋の扉を強引に開ける。


「ちょっと、やめてよ。大声だすよ」


「オレ、何かしたか?」


「自分が一番わかってんじゃないの?」



そのとき、マオが一瞬戸惑った顔をした。


「ピカ。確かに嘘をついてたことがある。今日はそのことをちゃんと話そうと思ってきたんだ」


「もうダメ。私はダメ。マオがわかんなくなった。マオの気持ちがわからない。別れよう」



マオの顔色が変った。


「ちょっと待って。ピカ、聞いてくれよ」



そのとき、マオの携帯が鳴った。


「出れば?どうせチサからでしょ?」


少し電話で話をしてたマオが電話を切った。


「ごめん。仕事でトラブルがあったみたいで。終わったら、すぐに戻るから待っててくれる?」


「イヤ」


「お願いだ、ピカ。オレの話を聞いてくれよ」


「早く行けば」


ドアを閉めた。



マオ、そこで途絶えてしまったんだね。私たちの赤い糸は切れちゃったんだね・・・。
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