楔~くさび~
病院に着き、看護士さんに部屋の番号を聞いて、ドアを開ける。
何?この雰囲気。
誰も何も話さない。すすり泣く声が聞こえる。
部屋にいるたくさんの人をかき分けて、ベッドに近寄る。
顔に白い布がかけられていた。
それで全てがわかったのに、私はそれを理解したくない気持ちがあって、心の中がぐちゃぐちゃになって。
座り込んだ。
座り込んだ私と同じ目線のところにマオの顔がある。
ゆっくりと布をとる。
生きてるよね?生きてないの?これ、お芝居じゃないの?私を驚かせようとしてるんでしょ?
頬に手をあてた。
冷たい。
マオの顔をゆっくり触った。
冷たい。温かくない。
何で?何でこうなったの?
私はその場で気を失った。