楔~くさび~
それから数日後。
私は煙突から出てくる煙を見ていた。
マオが灰になった。
あの日、マオはテレビ局に戻って1時間でトラブルを元に戻し終えた。そして、私のマンションに戻るため、タクシーを拾おうとしていたときに、飲酒運転の車に引かれ、数10m引きずられた。即死だった。でも、不思議なことに、顔だけには傷がほとんどなかった。
病院で見た最後のマオの顔を私は忘れない。
チサには、昨日会って、ひっぱたいた。
マオはチサに、私と付き合っていることを週刊誌のネタにすると脅して、時々二人で会ってたらしい。チサもマオのことが好きだったって。
「あんたのこと、一生許さない」
それだけ言って、私はチサから離れた。
マオ、煙じゃ触れないじゃない。空気と一緒になっちゃったよ。
すぐに戻るって言ったのに。
私は朝まで待ってたよ。
最後の望みを信じて待っていたんだよ。
「赤い糸」を聞いてたよ。
「会ってくれますかとあなたの手紙」
マオが大好きだって言ってたフレーズ。
私は今でも、この歌のこのフレーズを聞くと涙が出てきてとまらないよ。