〜starting over〜
もう何日も食をしていなかった者のように、俺は果実()を一心不乱に貪った。


メンバーで食事をしていると、マネージャーを伴った矢代瑠璃が挨拶にと現れた。
適当に受け流すつもりが、

「ステラは、私の姉です」

瑠璃の衝撃発言に耳を疑った。
確かに、瑠璃の本名は天野だったと記憶しているが、まさかーーーーっ。

「嘘じゃないですよ。天野星菜は、私の6コ上の姉なんです」
「……星菜は元気か」
「はい。湊さんと別れてから、当時傍で支えてくれた人と結婚して、今2人の子供がいます」
「そうか……」

俺達が付き合っていた事は、一部の人間しか知らない。
と言う事は、事実なんだろう。
ステラの孤高の孤独を支えた人物。
分刻みの目まぐるしいスケジュールのステラを傍で支える事が出来る人物。
それは身近な人物でなければ無理な話だ。
て事は、俺もその相手を知っている……?

「Whateverの再結成で、湊さんを見て、とても懐かしがってました」
「……そうか」
「今は名前に2つ星が入って縁起が良いね、て笑っています」

星が2つ……。
それを聞いて1人の人物の顔が頭に浮かんだ。
思わず笑いがこみ上げてきた。
そうか。
そうなのか。
星菜を見出してきた人物は、星菜の歌だけでなく星菜の人柄にも惚れこんでいた。
それが、恋愛感情だとは思わなかったが、そうか、そうだったか。
これから先も、どうか幸せであって欲しいと、2人の姿に思いを馳せた。



雑誌を床にたたきつけると、アキラが冷やかすように口笛を吹いた。
その時ノックが響いて、Museメンバーが挨拶に訪れた。
杏と目が合ったけど、あっちも何故か不機嫌に顔を逸らされた。
おい、怒ってるのはこっちだぞっ。

もう気持ちを隠す気もなくなった。
言いたい、俺のモノに手を出すな、と。

本番中、杏を庇って背中をうち、スタッフに控室に運ばれる。
これしきの事で……年かなぁ。
生放送を終えた杏が泣きそうな顔をして控室に飛び込んできた。
柔らかい身体が俺を包む。
バカヤロー。
おまえが無事ならそれでいいんだ。
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