〜starting over〜

「真輝がね、連絡くれないの。昨日、バイト終わったら連絡くれるって言ったのに。最初はバイトが長引いてるのかなって思ってた。でも、すぐまた他の子と一緒なんじゃないかって、不安でたまらなくて。ラインしても既読つかないし、だからって何度も連絡して縋るよう真似も出来なくて」

重く圧し掛かる不安を一気に吐き出せば、次から次へと転び出る。

「だって、しつこい女だと思われたくないじゃない?だから、会った時にきつめに怒って念を押して。その後、真輝が私にピッタリついてくるのを見て『私はまだ必要とされてる』って、そう確信できて、やっと少し安心出来るのに。今朝は、どんなに待っても真輝が登校してくる気配もないし、未だに既読もつかないしっ。だから不安で不安で……。もう頭の中もメチャクチャで、苦しくて……。私、どうしたらいいの?私達、なんでこうなっちゃったの?もう解らないの……」

抱えきれない感情が言葉の波となって次々に溢れ出る。
玲奈にしか弱みを曝け出せないのは、私の唯一のプライドだ。
真輝には、余裕がないところなんて見せたくない。
最初のうちは、どうしてって真輝に問うことは出来てたのに、いつからかそれが出来なくなってた。
その度に「ごめん。でも1番大切なのは杏だけだよ」て。
それが、泣いているような弱ったような微妙な微笑みで、何故かそれ以上踏み込めなくなった。
だから、ただ、私が1番好きだと。
彼女は私だけだと言う真輝の言葉を信じてここまでこれたのに。

「……こんな時間まで、1人で苦しい思いさせてごめんね。ちゃんと朝来ようと思ったのに……遅くなってごめんね。ごめんね」

私のこみ上げてきた涙を、教室内から見えないよう玲奈は自分の中に私を隠す。
涙が頬を伝う寸前で、玲奈がハンカチで拭ってくれる。
玲奈が悪いわけじゃないのに、何度も謝って一緒に泣きそうな顔をするから、荒立った気持ちがクールダウンしていく。
真輝に言えない思いも、玲奈が受け止めてくれるから私は私でいられる。
多くの事を望んでるわけじゃないのに、どうしてうまくいかないんだろう。
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