〜starting over〜
爆発しそうな感情の行き所がなく、爪が食い込むほどグッと拳を握りしめる。
物的証拠を覆すような嘘もついてくれないのは、私に対する誠意なのか、いつも通り許されるという安直な思いなのか……。

「1度だけだから。もう2度と……っ」
「1回だけならいいって話じゃないでしょ?」
「………」
「もう……何を信じたらいいのか解らない」
「杏……」
「もういいっ。2人とも要らない」

教室を飛び出ると、ただ只管走った。
廊下を歩く生徒は私の風圧に圧倒されて、ぶつかるギリギリで避けてくれた。
私は全てから逃げるように、全速力で廊下を駆け抜けた。
下り階段に差し掛かると、肩を強く引かれた。
息を切らし、追ってきた真輝だった。

「ごめんっ。俺、杏と別れたくない!」
「触らないで!」

再び手を振り払う。

「杏、待って!俺にとって1番大事なのは杏だけなんだっ!」
「どの口がっ!!」

そんな事を言うのよ。
心を圧縮している怒りの片鱗が爆発しそうになって抑えて静かな声音に変える。

「どの口が、私を大事だというの?毎日とっかえひっかえ違う女の子を侍らせて」
「それは……」
「あ……そうか。私達、付き合ってるって事自体、勘違いだったのね……」
「ちがっ」
「何が違うのよ!付き合っててこんな扱い、おかしいでしょ?」
「違う!俺は杏と付き合ってるし、杏は俺の彼女だ」

は?

「じゃあ、私の気持ち、考えた事ある?自分の彼氏だと言う男が、悪びれる様子もなく毎日違う女の子と身体の関係を持ってるのを見て、どれだけ苦しんだか。しかもその遊んだ女の子に嫌がらせされて、大好きだった部活だって辞めた。新しい友達もできなくて。クラスメイトからは毎日好奇な目で見られて、からかわれて。あなたにどんなに苦言したって、何一つなおる事はなかった。それに……」

これが一番の問題。

「玲奈は私の親友だった。小さい頃からずっと一緒で、親に言えない事も玲奈には話せた。私の気持ちを知ってて裏切られるなんて……。私は、何を信じたらいいのよっ」
「俺は杏と別れないっ。頼むよ。2度としないからっ」
「2度とって……もう何十回浮気してると思ってるのよ。そんなその場しのぎのセリフは聞き飽きた。私の心は、もう真輝を受け付けないもの」

顔を真っ青にして茫然とする真輝。
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