〜starting over〜
「休めば大丈夫っ。それより、お母さんこそどうしたの?お店は?」
お店が混雑するピークなのに、こんなところに居ていいの?
いや、居てくれて助かったには助かったんだけど。
鞄も持たず教室を飛び出してきちゃったから、家の鍵もなかったし。
「……用事があって、今日お店休業にしたのよ」
少し言い難そうにはにかんだ。
中に入りましょうか、と玄関扉を開けた時、家の前に黒いセダンが停止した。
洗車したばかりのようにピカピカな車体に、窓は透過率の低いスモークがビッシリ。
我が家寄りに停車って事は、うちに用があるのだろう。
ちょっと怪しいお車に振り返り降車を待とうとすると、お母さんが私の背中を押して家の中に押し込んた。
「部屋に行ってなさい」
「え、どうしたの?」
「いいから、早く部屋に行きなさい。絶対出てきちゃダメよ!」
捲し立てるようなような口調で、普段穏やかなお母さんから出た尋常ではない声音に固まると、
「早くっ!」
バタン!と勢いよく扉を閉められてしまった。
もう~、今日はなんて日なんだろう。
最悪としか言いようがない。
ああー、それより早く制服を脱ぎたい。
真輝や玲奈に触られたところが気持ち悪い。
シャワー浴びたい。
具合悪い設定なのにお風呂入るのはおかしいかな?
まぁ、いいや。
言い訳は後で考える!
さっさと脱衣所で制服を脱いで、勢いよくシャワーの蛇口を捻る。
頭からシャワーを浴びて、シャンプーを一気に泡立て流す。
こういう時は、ワイルドさが大切なのよ。
頭のてっぺんから爪先まで、体中、ピッカピカに洗ってこの勢いのまま寝てしまおう。
起きてたら余計な事を考えてしまいそうだし。
全部捨てた。
もう終わった。
だから、全部洗い流して、新しい私になるの。
妬み僻み、卑屈になってた私は次起きた時には完全消去!
胸が痛い。
苦しい。
そんなの今だけ。
人は、進むしかないの。
だって、幸せになりたいもの。