〜starting over〜
そして、スマホ取り出すと何処かへ電話を始めてしまった。

「もしもし?今どの辺まできてる?……そう、じゃあもうすぐ着くのね」

お母さんの会話をききながら、感じる疎外感。
それ以上どうしようもなくて、部屋に引っ込むしかなかった。
さっき聞こえたワードを並べ、組み立てては身震いをした。
それに、佐伯おじさんが関わっているらしい。
期限が明日。
あの怪しいと感じた車は、借金取り。
佐伯おじさんってのは、お父さんの友人だ。
私と同じくらいの女の子が居たから、一時期よく遊びに行き来はしていたけど、ここ数年会っていない。
ああ。
だからなのかな?
最近お父さんが彼方此方駆けずり回ってるっぽいのは。
お母さんも今日お店を休みにしたのは、それが関係しているんだろう。
私の知らないところで、いったい何が起こっているの?
両親が大変な時、私は一体何をしていた?
私が子供だから、何も知らされなかった?
真輝と玲奈の事。
ウチの借金の事。
あまりにも大きな問題が一気に押し寄せてきて、私は震える身体を抱きしめた。


インターホンが鳴った。
いつの間にか眠ってしまっていたらしく、辺りは夕闇に包まれ始めていた。
またさっきの借金取りがきたのかな?
怖い……。
でも。
今度は、お母さん1人で対峙なんかさせない。
重い身体を鞭打つように、意を決して階下へおりていくと、話し声が聞こえてきた。

「早く来てくれて良かったわ。もう、どうしようもなくなってしまって」

心なしか、お母さんの安堵が伝わってきた。
今度こそ、心を許せる相手らしい。
拍子抜けしながらも、張り詰めた緊張を開放して階段から顔を出すと、意に反して、不機嫌そうな男の人と目が合った。
つい固まって、凝視してしまう。
大学生……だろうか。
長めの前髪からのぞく切れ長な目と鼻筋が綺麗な端正な顔立ちで、細身で背の高い。
スウェットとジーンズというラフな服装なのに、何故か洒落感半端ない。
主婦と大学生(仮)。
お母さんの交友関係にも疑問を抱かずにはいられない。
どう考えても、逆援助……いやいや違う!
母を信じろ、私。

「……杏か?」
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