〜starting over〜
どんなに猜疑心に苛まれても、美しい思い出の欠片たちに嘘はなかったから。

変わらずにいてくれたのは、玲奈と島田君だけだった。
敵だらけの学校の中で、2人だけが私の拠り所。
好奇な視線や、心無い言葉をなげかけられた時は、玲奈と島田君が盾になってくれた。
知ってか知らずか、真輝は「彼女は杏だけ」と豪語しておきながら、他の女の子と関係を絶つ様子は微塵もなく、私を苦しめるだけ。
それでも、好きだったから何を犠牲にしても傍に居たかった。

玲奈と真輝が関係を結ぶまでは。

玲奈とは、よく気があった。
好きな音楽も、漫画も、好みのタイプも。

「うちら、三次元の男の好みが違って良かったね」

とか喋ってた事があったけど、本当は玲奈も真輝が好きだったんだろう。
私が先に好きと口にしてしまったから、気を遣わせたのかもしれない。
真輝と付き合い始めた時も、玲奈は好意を微塵も感じさせず応援をしてくれてた。
真輝の浮気で傷つくと励まし、寄り添ってくれてたのに、私は、玲奈の優しさに甘えて傷つけたのかもしれない。
それなのに、知らないところでその大事な人達に裏切れるとは、皮肉なものだと思う。
もし、私が2人の関係にあのまま気付かなかったら。
2人は裏で私を裏切り続けたのだろうか。
そして、どんなに傷ついても別れを決断できなかった私は、自分のブライドを維持する為に、また真輝に悩まされる日々が続いていたのかもしれない。
結果、これで良かったのんだろうな。
なかなか踏ん切りのつかない私は真輝と別れられたし、私がいなくなったのだから、真輝は思う存分、己の欲を満たせばいい。

こうして考えると、あの場に居た私は、どんな存在だったんだろう。
居ても居なくても、時間は流れるし、人の人生に何ら影響も与えない。
私が消えて悲しむ人も居ない。

玲奈も、これでもう私に気を遣う事はない。
私に合わせて進学して、部活も辞めて。
友達だって、私が一緒じゃなかったら、沢山出来ていたはず。
優しいし、気遣い上手だし面倒見だって良い。
だけど、それが最終的には私には残酷なものだった。
信じてた。
真輝も玲奈も。
大好きだった分、ショックも大きいし、許せないと思ってしまう。

「両親の借金の事は、本当に唐突すぎて凄くショックだったけど、私にはどうする事も出来ないし。昨日、湊さんと話して、何の役に立たない事が解ったから、せめて足手まといにはならないように、とは思ってるけど……」
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