〜starting over〜
それでも、両親の為に、何かできる事はないか模索はしたい。
一息つくと、湊さんは徐に黙って立ち上がり、キッチンの方に行ってしまった。
長々と重い話をしてしまったから、気が滅入ってしまったのかもしれない。
『男は面倒な話は苦手だから、許してやれよー』
て、真輝に詰め寄る私に、クラスの野次馬男子に投げかけられた事を思い出す。
確かに真輝は笑いながらも、逃げたいって顔に書いてた。
嫌われたくないから、私も曖昧にしてしまって……。
もうやだっ。
過去の幻聴から逃げるように丸まると、膝を抱いて顔を埋めた。
もう私を責めないで。
これ以上、苦しめないで。
後頭部をトンと突かれた。
顔を上げると、目の前に袋のままのコンビニのサンドウィッチがあった。
「食え。普段自炊しないから、こんなんしかないけど」
黙って受け取ると、テーブルの上に牛乳が入ったコップが置かれた。
戸惑い、湊さんを見上げる。
「人の三大欲求に謳われてる中に、食欲がある。食べないと、思考だってうまく機能しない。食べて寝て、気持ち休めろ。今後の事はそれから話し合おう」
ほら、と差し出され、受け取る。
「兄さん達からおまえを預かったからには、今日から俺がおまえの保護者だ。おまえが独り立
ちするまでは、最低限の面倒はみると決めている」
私が独り立ちするまで……。
それは暗に、最低でも私が独り立ちするであろう年頃まで、両親の借金返済は終わらないというのを示唆していた。
そんなに……。
湊さんが何処までを視野にいれているかは解らないけど、高卒なら、最短でも後3年。
20歳までだとして5年……。
その間に返せないほどの負債が、うちにはあるんだ。
想像が超える見えな壁が、目の前に立ちはだかっていて、私は息を潜めるしかなかった。
それから、言われたとおりご飯を食べると自然と睡魔に襲われ、また湊さんのベッドを拝借。
思ってるよりも精神的にダメージを受けているのか、夜まで眠ってしまった。