〜starting over〜
メタボの代表とも言えるデップリとしたお腹。
冬でも汗だくで、タオルを首に巻いている。

「うっうっ……、ご、ごめんね」
「適当言っちゃ駄目ですよっ。人に誤解させて、迷惑かかる人の事も考えてください!」
「う、うん。そうだね……」

本当に解ってるのかしら?
でも、この店長のお陰で、常連客とすぐに打ち解けたのは事実で、基本悪気もないので憎めない。

夜は、昨日宣言されたように22時を過ぎても、湊さんは帰ってくる気配はなかった。
もしかしたら、と思って、一応夕食の準備はしてみたんだけど、やっぱり要らなかったみたいね。
明日はバイト休みだから、明日の朝食か昼食にしよう。
でも、ちょっとがっかり感は否めない。
職業不明だけど、湊さんはニートではなく、ちゃんと働いてるって証拠だしね。
そして、私に衣食住を提供をしてくれている有り難いお方なのです。
南無阿弥陀仏……は違うか。
食事を作る相手が居ないって、こんなにも張り合いがないものなのね。
お皿にラップをして、戸締りを確認して寝る事にした。

翌日。
朝起きても、湊さんの姿はなかった。
閉まり切っていない部屋のドアや、飲みかけのグラスの放置。
洗濯機に着替えた服が入っていたりと、一応、帰ってきた気配はそこら中にあるけど、当の本人は既に出掛けた後のようだった。
とりあえず、洗濯をまわしながら朝食を摂る事にした。
口角をあげながら、トーストに齧り付く。
昨日ラップしたはずの夕食が空になったお皿を眺めながら。

クリスマスの日も、湊さんは部屋に閉じ籠るか、打ち合わせ、と言いながらふらっと仕事に出掛けたり。
落ち着かない雰囲気のまま、お正月を迎えた。
おせち、とまではいかないけど、車海老の艶煮や筑前煮、蒲鉾に、黒豆、鯛の姿焼き。
それっぽいもので、元旦の夕食を済ませ、お風呂の準備でもしようかと思ってた頃。
湊さんは、また出掛けてしまった。
会社の年始の飲み会らしい。
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