〜starting over〜
「どうしたの?今日部活は?」
「今日、自主練だったので早く終わってきたんです。先輩達は、今からどこか行くんですか?」
「うん、ストレス発散にカラオケ行こうかって」
「ストレス……。あぁ……」
その「あぁ」の言葉に含まれているであろう意味に、何となく気持ちが沈む。
真輝は雑誌に載ってから、こんな田舎では有名人だから、噂は中学にまで届いているのかもしれない。
女子には、ちょっと頑張れば手が届きそうなイケメンとして。
男子には武勇伝的な意味合いで。
「私も一緒に行きたいですー」
「いいよ。久しぶりに3人で遊ぼう」
「やったー」
久々美香も一緒だと、靄がかった気持ちに一筋の光を感じる。
このにこにこ笑顔。
癒される~。
思わず、ぬいぐるみを抱くように美香をギューっと抱きしめると、
「先輩痛い……」
「我慢して。今癒しを充電中なの」
「え~、私なんかで~?それ病みすぎじゃないですかー?」
それでも、すぐにこっとしてくれるから許しちゃうのよね。
だから、また更に力を込めてギューっとしちゃう!
「うえっ。先輩っ、ギブです!ギブ!」
中学の時の戻ったような懐かしいやりとりに、玲奈は笑った。
地元のカラオケ店は、個室の音漏れはあるけど、お小遣い生活の学生さんには優しい料金設定。
案内された部屋に入って、ドリンクバーから飲み物を調達してくると、まず最初に入力する曲は玲奈と一緒に唄う『Dear my……』。
中学の時に流行った歌姫『ステラ』のアルバムに入ってた曲で、未だによく聞く1曲。
玲奈とは家が近所で保育園からの幼馴染。
私たちは姉妹のように仲が良くて、何をするのも一緒。
中学に入ってからは、小学校から続けている吹奏楽部に迷わず入部した。
そこはマーチングも盛んで、まるでダンスのようなステップを踏んで演奏をする。
部員数は少ないながらも全国出場もしていて、私達の憧憬だった。
私達は、いつも一緒だった。
玲奈とは、兎に角好みが似ていて、好きな音楽も好きな漫画も、それに出てくるヒーローのタイプも同じで、回し読みをしてはキャーキャー騒いだものだ。