〜starting over〜
事務所と契約を交わす時、保護者として現れた湊さんに事務所スタッフ一同驚愕し、社長は何故か大爆笑。
実の両親から委任されている保護者なんだから仕方ないじゃないね。
湊さん曰く、俺はオーデションで最後まで反対した、らしい。
自分の後押しがあったから合格したと思われるのも然り、夢に見るような甘い世界じゃない、と。
だから、最後の最後まで捺印を押すのを躊躇っていた。
不機嫌顔から想像できないけど、意外と心配してくれているのね。
一先ず、石の上にも三年、3年やってダメなら即引退と口約束の上で、書面にサインをいただいた。
メンバーには、最初に湊さんとは親戚関係だけど、それに関係なく、他薦ではあるけどちゃんと段階を踏んでオーディションを通過・合格した事を説明したので、不平不満は特になかった。
それから、ボイトレとダンス練習、基礎体力つくりに暮れる日々が続いた。
中学の時、真輝に少しダンスを教えてもらった程度のものは、まっっっったく通用せず。
朝から晩まで体幹を鍛えて、筋トレしたりでフラフラになりながら、毎日練習とトレーニングに打ち込んだ。
余計な事など考える暇がなかったのは助かったけど、死にもの狂いで頑張ったのよ。
女ってグループや派閥を作りたがるけど、うちらメンバーはライバルではあるけど、同志でもあるという意識の方が強くて、皆仲が良い。
人気低迷から脱するべく、ちょっとしたイベントや挨拶に駆け回ったりもした。
トレーナーさん達の多々いなご尽力のお陰で、私達は10代、20代の女性ファンに支えられてるアーティストになれたんだけど。
私達が短期間で単独ライブを行えるほどになったのは、付いてきてくれたファンとグループとスタッフの涙ぐましい努力と事務所推しの賜物……の他に、慮外な報道もあったからだ。

まさか、の、真輝とのスキャンダル。

真輝はモデル業を本格化した上に、同時進行で俳優業も精力的に取り組み始めた。
付き合ってる時、既に雑誌での露出が増えてたらしいけど、私は私の隣に居る真輝以外認めたくなかったから、意図的に情報をシャットダウンしてたから、視聴者のように書面やTVで知ったんだけど。
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