〜starting over〜
更に、あの湊さんが頑張って、ここぞとばかりにMuseの新曲を続けて発表。
私と奈々は『同級生コンビ』としての広告塔として露出が増え、ついに2人の名前を繋げて『AnnA(アンナ)』のユニット名でデビューを果たした。

「長くなったけど、これが、今の私」
「色々大変だったね。でも、おじさんやおばさんは、遠くからでも杏の活躍を見れて嬉しいんじゃない?」」
「……解らない。でも、そうだといいな」
「そうに決まってるよ!我が子が遠くで頑張ってる姿を嬉しくない親なんていないよ?私なんて、雫の保育園の発表会で涙出てくるもん」
「えっ!?」
「マジ、こんなに大きくなって~て。ジジババなんて口に手をあてて『天使が居る~』て泣いてるよ」
「それはそれで可愛い……」
「だから、今は忙しいかもしれないけど、1度時間ある時に実家帰ってみたら?」

最後の別れ方があんなんだったから、どう顔を合わせたらいいのか……。
喜んで……くれるかな。

「……実は明後日、地元で凱旋ライブがあるの」
「丁度いいじゃん」
「でも……」

私が言わんとする事を察したんだろう。
さゆ姉が、ひと息つく。
流石親戚。
色んな情報が飛び交ってる。

「雫が産まれたのは冬でね。陣痛が始まったのは夜で、翌日の朝はほんのり雪が積もってたの。陣痛の感覚が短くなって、病院で分娩室に入って、産まれたのは夕方だった。立ち会った旦那なんか、涙ボロボロで、こっちが引く位だったわ。でも、やっと出会えた温かい命を腕に初めて授乳した時、不思議だけど凄く嬉しかった。気が高ぶって、なかなか眠れなくて、雫をずっと眺めてた。小さい欠伸も、ちょっと身じろぐ仕草も可愛くて、何が何でも護って行こうって心に決めたのよ」

疲れて眠ってしまった雫ちゃんの頭を優しく撫でるさゆ姉の顔は、慈しみに溢れ、どれだけ雫ちゃんを大切に想っているかが窺える。

「自分の子供が可愛くない親なんか居ないの。日々1つ1つの成長が眩しくて、愛おしくて。子供が泣いていれば、我が事のように心を痛める。だから、好きで子供を手放す親なんていないのよ」
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