〜starting over〜
そして、その湊さんが、期間限定でバンド『Whatever』を再結成した。
当時リアルタイムで聞いていた同年代のファンは勿論、動画サイトで楽曲に触れた若い世代でもSNS上で反響をよび、Whateverは歌番組、ラジオ、ライブで大忙しとなった。
それだけならまだいい。
いつも不機嫌顔の湊さんが、音楽家として注目されるのも解る。
多くのヒット曲だしてるしねっ。
ただ、湊さんの甘い歌声に世の女性が酔いしれ愛のメッセージがSNSに上がると胸が騒めいてしまう。
最近忙しくて一緒にいる時間がとれなくなって寂しいのに、湊さんは相変わらず安定の不機嫌顔というか、クールというか……。
これが、大人余裕なのかな、なんて、自分の幼さが嫌になる。
だから、平気なふりして強がってしまう。
それでも、お互い少ない時間の中で重ねる情事にありったけの想いを詰め込でるつもりだけど、なにぶん私のスキルが追い付かず、翻弄されて目覚めた時には冷たいシーツの上に一人きり……。
私だって、色々……色々色々、色々色々色々色々湊さんを翻弄したいのにっ!
私の彼は何を考えてるのかしら……て。
今更だけど、付き合おうってお互い口にした事あったっけ!?(ガーン)。
ただのセフレ?
いやいや、姪をセフレにする?
でも、最初『しよう』誘ったのは私。
でも、付き合おうとは、どちらも言ってない……。
これじゃあ、真輝の取り巻きと一緒じゃない!!(ガーン)。
そんな悶々としていた時、1つの仕事が舞い込んだ。
スマホゲームアプリのCM。
部屋でバトルゲームに夢中になる設定。
自然体で撮りたいという事で、私服で撮影する事になった。
なので、デニムサロペットと寂しさを紛らわす為に、湊さん愛用のパーカーを拝借(借りパクともいう)。
撮影を終えた後、スポンサーとなったゲームアプリ会社の社長さんとゲーム開発員との食事会が予定されていて、新しいマネージャーとなった三浦美鈴さんと指定された懐石料理屋に向かった。
ちょっとお高そうなお店に、お食事マナーが心配で恐縮してしまう。
「失礼します」