〜starting over〜
個室に通されて、扉を開かれたと同時に、慌てたようにバタバタと2人の男性が立ちあがったのを視界の端でとらえた。
遅くなりました、と先に挨拶をする三浦さんが横に逸れて私も挨拶をしようとして、一瞬にして深いに眉を顰めた。
「真輝……と、島田君?」
2人とも綺麗めカジュアルな服装で、緊張した面持ち。
無言で三浦マネを睨む。
芸能界から真輝の姿が見えなくなって大分経つけど、決して『NG』が解除されたわけではないのに。
なんていうセッティングをしてくれたのよっ。
島田君に会うのは、高校の時に突然別れて以来だから、気持ち的に懐かしさで喜びの方が勝る、けど……。
「杏さんが佐野社長と過去に色々あったのは存じてますが、どうしてもとオファーがありまして……。話題作りにもなりますし、過去は水に流してと……」
「水に流すかどうかは、他人に決められる事じゃないと思いますけど」
その場から立ち去ろうと扉に手を掛けた時、島田君から背中に声を掛けられた。
「杏、待ってくれ。俺の話を聞いて欲しい」
「……ここでは話したくない」
「10分でいい。俺達に時間をくれないか?」
俺達……。
島田君と2人ではなく、真輝も含まれているらしい。
真輝とは1分1秒も顔をあわせたくないのに。
少し振り返ると、島田君の悲痛な顔を見えた。
気持が重い、苦しい。
時間は傷を癒すとはいうけど、この件に関して私にはその時間がまだまだ足りないらしい。
それでも、島田君には恩義がある。
辛い時、傍で励ましてくれた。
誰とも視線を合わせないまま、黙って空いている席に着く。
だけど、三浦マネには帰ってもらった。
完全なプライベート、他人に踏み込まれたくなかった。
「ありがとう」
「俺の話は聞きたくないだろうけど、謝らせてほしい。許されないのは解ってるけど、本当に、傷つけてごめん」
横を向いた端で、真輝が頭を下げる気配がした。
耳を塞ぎたい衝動をおさえ、自分を抱きしめるように胸下で腕をクロスする。
「モデル始めて、周りからチヤホヤされて調子乗ってしまったっていうか、モデル仲間との摩擦とかもあってストレスで……性依存症になってしまって」
性依存症……?
「自分でスルのだけじゃ満足できなくて。でも、杏をこんん事に使いたくなくて、させてくれる子なら誰でもよくて、1回だけ1回だけと思ってするうちに、どんどん抑えきれなくなって……」