〜starting over〜
ダンスの練習のし過ぎで、膝や腰を痛めて難本も注射を打った。
風邪で声の調子が悪くても。
気持ちが重くても、カメラを向けられれば笑顔をはりつけなくてはいけない。
だって、人に元気と夢を与えなきゃいけないから。
「ごめん。俺が悪いんだ。俺が……。でも、好きなんだ。今もずっと、杏が好きで、好きで好きで……頭ん中が杏でいっぱいで。杏に会いたい一心で芸能活動して、企業して……」
真輝にギュッと抱きしめられた。
ヤダ、放してっ。
息が止まりそうな程の抱擁に必死で身じろぐ。
やっと解放され、睨もうと真輝を見上げると、今にも泣き出しそうな微笑みが私を見下ろしていた。
「これ、さっき島田が渡し損ねたヤツ」
私の手に1通の封書が握りしめられた。
何これ、と言う間もなく。
「あの時、病気を告白していたら、俺は今も杏の傍に居られたのかな……」
睨みつけると、
「俺達は、いつでも杏を応援してるよ」
真輝の瞳に光るものを感じ瞬間、踵を返して走り去っていった。
残された私は、その場に立ち尽くした。