〜starting over〜
言葉がないと不安な時もある。
『杏へ

毎日、華々しい世界で頑張る杏の姿を見て、私が隣に居られた事が夢のように感じます。
まずは、杏を裏切ってしまった事、本当にごめんなさい。決して許されないとわかっていても、思い返さない日はありません。杏に真輝を紹介された時、一目で私も真輝を好きになってしまっていました。何度も諦めようと思ったけど、気持ちを抑えることが出来ませんでした。そして、偶然病気で苦しむ真輝を見かけて、魔が差してしまいました。杏が悲しむのを知っていたのに、気持ちを抑えられなかった。1度だけ……そう思ったのに、その1度が大事な杏を傷つけ、更に失ってしまって、どんなに謝罪を繰り返しても、戻せない時間を悔いてばかりです。杏が消えて、真輝も島田君も離れていき、1人の日が続きました。女手一つで母が頑張って入れてくれた高校だから、辞める事も出来なかった。杏の笑顔が隣にない事が、とても寂しい。それだけの罪を犯したのだと懺悔の日々でした。
暫くしてテレビで唄う杏の姿に歓喜した事を昨日の事のように覚えています。杏の雄姿が、私の心の支えでした。毎日MuseとAnnAの動画や曲を聞いて、勇気をもらいました。高校を卒業して、地元企業に勤めて2年。偶然、島田君と再会し、連絡を取るようになって、付き合うようになり、私のお腹に命を授かりました。お腹が目立つ前に、式をあげようと思います。都合がいいとはわかってるけど、杏にも出席をしてもらえたら嬉しいです。

玲奈』


真輝に渡された封書の中に、結婚式の案内状と、1枚の手紙。
懐かしい筆跡に心が痛む。
本当に都合がいいわ。
彼を寝取っといて、私をどれだけ苦しめたか。
そのくせ、自分の結婚式に出席を、なんて。
お腹に新しい命?
私には関係ない。
自分の幸せを見せつけたいだけじゃない。
玲奈はいつからこんなに性格が悪くなったの?
出席なんてありえない。
だって、ちょうどツアー中だもの、日時的にも無理だわ。
ゴミ箱にポイっと捨てて私は私の日常にかえった。

でも、ここで困った事が起こった。
真輝と島田君君にあった日、真輝に抱きしめれた写真がスクープされたのだ。
しかも、別のページには、湊さんと矢代瑠璃とツーショット写真が掲載されていて、私の心は大きく揺さぶられた。

なんで、あの瞬間が写真に撮られてるのよ!
なんで事務所も週刊誌から通達があった時に押さえてくれなかったの!
どーせ、いい宣伝になるとでも思ったんでしょ!
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