イジメ返し3
イジメのはじまり

12年後


「今日から皆さんのクラスに新しい仲間が一人増えました。じゃあ、自己紹介をしてくれる?」

学期途中の珍しい転校生の登場に教室中の視線が一斉に注がれる。

「はぁーい」

担任の先生にうながされて教壇の上に立って教室中をグルリと見渡す。

痛いほどの視線をかいくぐりながら目的の人物を探す、

……違う。この子じゃない。この子でもない。

どこにいるの。どこに――。

「えっとー、西園寺カンナで~す。訳あって何度も転校してきたけど、転校するのはこれで最後になりそうです。みんなと仲良く楽しく過ごしたいでーす。よろしくねっ!」

……いた。みーつけた。

窓際の一番後ろの席に座る一人の女子生徒と目があった。

興味なさげに腕組みしていた女子生徒は目が合うなり身を乗り出してジッとカンナを見つめた。

「えっ、アンタってまさか……」

彼女は一度いぶかしげな表情を浮かべた後、

「カンナ……?」

安西美波が驚いたように声をあげる。

12年ぶりにその声を聞いた瞬間、カンナは自分でも気付かぬうちに両手を固く握っていた。

体が燃えるように熱い。

けれど、反対に頭の中は自分でも信じられないぐらいに冷え来ていた。

ようやく会えたね、美波ちゃん。ずっとこの時を待っていたの。

「あぁ~、美波ちゃんだぁ~!久しぶりぃ~!元気だったぁ~?」

わざとらしくはしゃぐと、美波はフッと口の端を意地悪く持ち上げる。


「まぁね。つーか、アンタこそ元気になったんだ~?」

美波とカンナの会話を聞いていたクラスメイト達。

教室内がガヤガヤとうるさくなる。

「あの転校生と美波って友達だったの?」

「友達っていうか、幼稚園が一緒だっただけ」

「へぇ、すごい偶然じゃん」

隣の席の子は驚いたようにカンナを見つめる。
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