イジメ返し3
そんな俺の様子をカンナはニコニコと嬉しそうに見つめる。

「翔平君のおうちってママと翔平君の二人暮らしなんだよねぇ?」

「あぁ」

「どこでお仕事してるの~?」

「お前に言ってもわからないと思うけど」

「夢原製菓じゃない~?」

「なんで知ってるんだよ」

ずっと専業主婦だった母は離婚してから何十社にも履歴書を送り面接を受けに行った。

そしてようやく採用が決まったのが夢原製菓だった。

「やっぱり~~?でも、それはマズいなぁ。こないだ翔平君が踊り場でお金を巻き上げてた男の子のパパって夢原製菓の常務取締役だよぉ」

「……常務?」

「すごーい力を持った偉い人だよぉ。翔平君のママをクビにするのなんて簡単にできちゃう人!」

まさか……あいつが……?

考えたこともなかった。アイツの親父が夢原製菓で働いているなんて。

心臓がドクンッと嫌な音を立てて鳴り始めた。

『翔平に大切な話があるの。あなたの学校でのこと。今日の夜、ちゃんと話しましょう。お願いだから、家に帰ってきて。約束よ?』

大切な話っていうのは、そのことか……?

普段だったらいるはずもないあの時間に家に戻ってきたということは……もうすでにクビを切られていてもおかしくないということ。

体中から血の気が引いていくように、背筋が冷たくなる。

それとは逆に心臓だけがドクンドクンッと大きな音を立てて震えている。

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