イジメ返し3
俺は床に座り込み、うつむいた。

「えっ、ていうかなにあれ。あの床見て?」

「嘘でしょ!?」

「おい、なんか臭くねぇ?」

「マジ?漏らしたってこと!?」

生物室の中がザワザワと騒がしくなる。

その中には美波の姿もあった。

全てを悟った美波はまるで汚いものでも見るかのように冷めた目を俺に向けていた。

「ちょっ、渡辺君!だ、大丈夫……!?えっとえっと、ちょっちょっと待ってて!」

テンパっている生物の教師が生物室を飛び出していく。

あまりに屈辱的だった。今まで感じたこともないぐらいの絶望が襲う。

ふざけんな。何なんだよ、これ。どうして。

カンナの野郎。アイツ、俺に何の恨みがあってこんなことを……――。

「どうして俺がって、思ってる?」

スッと俺の隣に腰をかがめたカンナ。

カンナはそっと俺の耳元で囁いた。

「イジメられてる人の気持ち、ちょっとは理解できたかなぁ?人をイジメるっていうことはね、その人の心も体も傷付けるの。どうして、なんでって思うような理不尽なことを翔平君にやられてたの。いざ自分の立場になってなんで俺が、とか思わないでね。翔平君はそれだけのことをたくさんの人にしてきたんだから」

もう終わりだ。すべてが終わった。

がっくりと肩を落としてうなだれる。

「誰か~!翔平君を助けてあげてくれるぅ~?ジャージとか貸してくれる人~!」

カンナの言葉に生物室にいる誰も反応しなかった。

それどころか、「マジ無理なんだけど」や「超悲惨~」という声が飛ぶ。
< 154 / 275 >

この作品をシェア

pagetop