イジメ返し3
「テメェ……!」

騙しやがったな!全身に怒りが込み上げてくる。

「渡辺君さぁ、なんで漏らすまでトイレ行こうとしないわけ?コントロールもできないの?」

腕を組んで呆れたように顔を歪める森田。

「違う!飲み物に何かが混ざってたんだ!それを飲んだせいで俺は――」

「渡辺君、顔真っ赤だよ?今さら必死に言い訳しても恥ずかしいだけだよ?」

バカにしたように笑う森田に俺は固まった。

見たことがあった。この場面を。

「死んだほうがいいんじゃない?こんな恥ずかしい姿見られて生きてる価値ないでしょ?」

「くっ……」

奥歯をぐっと強く噛みしめた瞬間、生物室の中がどっと沸いた。

笑っていた。クラスメイト達は俺の姿を見て心底楽しそうに笑っていた。

森田が同じ状況になったとき、笑う人間など誰一人としていなかったのに。

森田に駆け寄り、声をかけて励ましていたのに。

同じ状況のはずなのに、どうして全員笑ってるんだ。

なんでだ。どうして。俺は何を間違えた?いったい、なにを。
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