イジメ返し3
「もう食べらんない」

砂羽は箸を置くと、半分以上残ったラーメンの中に口を拭いたティッシュをまるでそれがゴミ箱であるかのように投げた。

汁をすったティッシュがラーメンの器の中に沈んでいく。

さらに残したプリンの器をラーメンの中に放り込み、箸でぐるぐるかき混ぜる。

「なんか今日のラーメン味薄すぎだったんだけど。あのババア何年やってんだって。ちゃんと仕事しろっての」

砂羽の言葉に「だね」とだけ答えると、特に気にする様子もなくスマホをいじり始める美波。

見ているだけで不愉快な気持ちになる。

食堂の厨房ではいまだに途切れることのない注文に汗を垂らして必死に働くパートのおばさんがいる。

『あれ、見ない顔だね。転校生?』

『はい。今日から転校してきました。西園寺カンナです』

『そうなの?じゃあ、今日はチャーシューをおまけしてあげる』

『わぁ~、嬉しい~!おばさん、ありがとうー!!』

普段は1枚なのに2枚にしてくれたおばさん。

そのラーメンはカンナが頼んだわけではなく砂羽が頼んだものだった。

そのおばさんの行為をむげにされたようで憤りが募る。

「砂羽ちゃん、食器に色々入れたらおばさんたちが洗うの大変だよぉ~!やめなよぉ~」

「別によくない?だってこっちはその分の金も払ってるんだし。アイツら作るだけじゃなく洗うのだって仕事だから」

モラルというものが一切備わっていない砂羽にこれ以上何かを言うのもバカらしかった。

食べ終わった食器も、美波と砂羽は運ぶ気などなかった。

しまいには『ここに置いておけばババアが適当に片づけるって。いつもそうだし』

そう言ってのける美波に抵抗するように、カンナは3人分の食器を返却カウンターまで運んだ。
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